抗ガン剤治療を決心するまで
母は、肺腺癌ステージ4で初期の膵管転移がありました。
両肺に3センチ程度の結節と小さな癌細胞が沢山散らばっている状態です。
治療が開始出来ないまま、一ヶ月が経ってしまいましたから、日に日に悪化して行っているのがわかります。
空咳の回数が増え、しんどさが増し、大好きな銭湯からも足が遠のいています。
母としては、「もう、十分に頑張って生きてきたし、積極的な治療はしたくないなあ。苦しまないように最後を迎えるだけを願いたいわ。」と主張していました。
私も、積極的な治療で苦しむのは可哀想だと思っていましたので、自費で大変高額ではありますが、今話題の免疫療法というのを受けさせたいと思っていました。
父と先生と母で、話し合いがされました。
先生曰く、「今はとても薬が良くて、少し前のように、酷い吐き気を我慢する必要もないし、緩和ケアは、治療中から積極的に受けられるから、上手に癌と付き合って、少しでも長く自分らしい生活をしましょう。
抗ガン剤をやめるのは、いつでもやめられるし、きっと、その時が来る時は、迷いは無くなっているから、迷っているなら、やりましょう。副作用が殆ど無いという、免疫治療は、一般的にまだまだ証明に乏しいし、それを行うにしても、癌をできるだけ小さくしてからでも遅くはないよ。」とのことでした。
なるほど、それならば、先生のおっしゃる通りにしてみようと思えました。とにかく、個人の生活の質を落とさないでいられる事が、最も重要な課題なのです。
なぜなら、母は高齢ですが、自分の体が動く限り、地域社会に尽くし、若い世代に知恵や安心感を与えてくれました。
その恩恵を、元気な私達若い世代が享受し、社会に還元して行っていることを忘れてはいけないと思っているからです。
経験を重ねた高齢者が、地域社会で活躍してくださるという期待と価値が、少子問題にもリンクしていることを、日頃から母の活動や姿勢を通して実感しています。
副作用が無くなれば、病気と共存しながら、自分らしく社会生活を全うできれば、癌になっていたって、慢性的な病があったって、その人の人生や社会での生産性は急激には失われません。
痛みや、苦痛がその人の生活の質を落とす一番の原因なのですから。
まだまだ、母は、体さえ動けば期待される事や、役目を果たせる経験や知性があります。
母に限らず、そういった方々の経験や知性が病のために、病の苦痛のために、真っすぐ終わりに向かってしまうのは、社会にとっては大きな損失でもあります。
いかに、それぞれの世代が、自分に出来ることを自分らしく続け、社会に還元していくのか。地球が自転するかのように、普遍的な力として存在させるのか。
高齢者に限らず、病気と上手く付き合い、生活の質を保って行くことは、少子高齢問題解決の1つの鍵だと思えます。
行く行くは、母に受けて貰いたいと思っている、副作用が少なく色々な癌に有効であると言われている、免疫療法は、やはり高額であるため、最後まで受け続けられた方が少ないのと、ネット上でも、リアルな患者側からの情報発信が無いため、本当に有効な治療であるのか、身体状況がどの程度改善していくのかは、今の所賭けのようなものなのです。
もっと、患者側からの情報発信が無いのかといつも思います。
むしろ、私も、母が免疫療法を始めたら、患者側からの情報を発信しなくてはと思っています。